散髪屋ナーイ


お坊さんなのに髪の毛がある。エッ!一般的にはびっくりするかもしれない。わが浄土真宗は有髪がまったく問題ない。お坊さんになる時(得度)は男性のみ一回だけ剃り上げる決まりはあるがその後ヘアスタイルは個人の自由である。念仏信仰のためには有髪も丸坊主も関係がないというスタンスだ。というわけで日本寺に赴任するときスポーツ刈りでインドに出向いた。浄土真宗だからいいだろうと。しかし日本寺に到着する前日いっしょに行った先輩僧侶から有無を言わさず頭剃りを命じられ、村の散髪屋で剃髪した。今思えば当たり前で髪の毛が伸びたお坊さんというのは基本インドでは考えられない。赴任終了の帰国に合わせて少し伸ばし始めた時にスリランカのお坊さんからそろそろ剃ったらどうだと言われたこともある。

日本寺には週に一回のわりで出張の散髪屋さんが来てくれた。頭を剃ってくれるナーイと呼ばれる散髪屋のおじさん。一回5RS15円で剃ってくれるがカミソリが伝統的な一枚刃のあまり剃れないカミソリなので痛い。頭を切られることも普通で、いやなので時々T字カミソリで自分でしていた時もあったが、せっかくお寺まで出張したのに何故しないのだと言われるのと自分で剃るのは結構手間がかかるので大体お世話になった。

ある時剃髪中、後頭部の首筋近くを切られて結構出血したことがあった。特に気にしていなかったが数日後腫れて熱まで出だした。首が曲がらないくらいパンパンに後頭部首筋が腫れて日本寺付属の病院で抗生物質をもらってなんとかなったが、帰国しても同じところが数年間にわたり年に数回腫れた。後から聞くと彼の使うカミソリは消毒すらせず使い、また遺体の毛を火葬する前に剃ることをヒンズー教は行うが、それも彼の仕事で同じカミソリを使っていたそうだ。

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ナーイのおじさん。おじさんの横に散髪時に首にかけてる布と手前に散髪道具入れが写る。