ぼったくりしないインド人


 

インド人はすぐぼったくって信用ならん。インドを旅行する人に取って100%立ち向かう難題である。特に交通機関、タクシー系交渉は確実に旅行者のストレスとなる。日本のような料金メーターはない。インドの田舎の主流はサイクルリキシャ。自転車を改造した人力車。聖地ブダガヤも数多くのサイクルリキシャが走っている。

ブダガヤは観光地。必ずぼってくる。駐在したての頃これに悩まされた。駐在していた日本寺からブッダガヤ大塔まで、人によってはこの約2キロを100rs、300円(当時レート)という。インド人の平均月給を考えても高すぎる。1ヶ月ほどしてブッダガヤの人にも顔を覚えてもらい結局基本は5RSつまり15円。あるとき自信に満ちた顔をしているおじさんのリキシャに乗った。3RSと言った。地元価格である。本人から言った値段で交渉はしていなかった。それから帰国するまで。彼は私の専属になった。大塔のリキシャ乗り場には通常20台以上のリキシャが客待ちをしており、客が来るとそれはそれは入り乱れての客争奪戦となる。私たちは目をあわすやいなやその混乱を無視し颯爽と乗り込でいた。周りのリキシャマン(リキシャ運転手)からは閃光のまなざしである。仲間から「どうしてお前のにだけ乗るのだ!」彼は「いつもだよ」か「専属だよ」みたいなことを言っていた。これがほぼ毎日続いた。

帰国しすでに十数年以上。今も私は彼のリキシャがいれば颯爽と乗り込む。会話はない。お互いニヤリと笑うくらい。心でわかる。ほんと最近インドに行ったとき始めて名前を聞いた。日本語で「美しい人」という意味であった。なぜ今まで聞かなかったか。お互いそのような会話はなかった。不思議だ。出入りの激しいリキシャマンの中では超古株である。彼はまじめにぼりもせずきっちり自分の仕事を行っている。顧客も地元では実に多い。

今も阿吽の呼吸で日本から数年に一度の私をのせてくれる。ジャリジャリという警告音の鈴の中、野焼きや排気ガスのにおいを嗅ぎながらリキシャはゆっくりゆっくり進む。もちろん今は3RSなんて野暮な金額は払いません。

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