ベトナムは人口の8割ほどが仏教徒であり、その多くは日本と同じ大乗仏教である。禅と浄土教を合わせたような仏教である。お隣のカンボジアやラオスは上座部(小乗)仏教なのでちょうどこの国が大乗と小乗の分岐点となっている。
2017年ホーチミン市の寺院巡りを行った。市内の永嚴寺は日本の福島県の寺院から奉納された日本の鐘楼にある非常に有名な寺院である。ご本尊は阿弥陀仏。念仏(マントラ的な信仰)や観音菩薩のマントラを唱えつつ禅もするといった形で、よくよく見るとチベット仏教も信仰に取り入れられていた。他の寺院にもお寺のカラーか多少違いがあるが、寺出版の施本経典内の一部にもチベット文字を使っていたり、売店にはダライ・ラマ法王の書籍が山済みだったりとなんらかの形でチベット仏教が絡んでいる。
また見学したベトナム歴史博物館の19世紀のグエン王朝の王の服の袖にもチベットでは非常に人気のあるタシ・タゲと言われる八吉祥のチベットのデザインが施されていたし、裾はチベット絨毯を彷彿とさせるデザインであった。思えばメコン川の源流はチベットであり、川を使えば文化交流は十分可能である。事実メコン川を遡りゴールデントライアングルにはチベットを起源とするアカ族という少数民族もいる。
大乗仏教と上座部仏教の境までチベット文化が根付いていることは意外であった。