聖地の治安


インドに赴任するためカルカッタ(現コルカタ)の空港に降り立った。イミグレーションで緊張しながら入国審査に並んでいると日本人に尋ね人のチラシを渡された。聞くとインドで行方不明になった19歳の子供を捜しに来た家族だった。まだ入国もしてないのにいきなりこれか!

インドは治安はいいのか?基本的には問題ないと思うが場所や時間帯によっては非常に危ない。当時ブッダガヤ付近に限って言えばまず夜間は強盗「ダコイット」が出た。約12キロ離れた国鉄駅のあるガヤという街がブッダガヤへの玄関口になるのだが、その道中でオートリキシャ(小型タクシー)が襲われた話はよく聞いた。一人で夜間移動中に日本人の女性が暴行される事件も起きている。また昼間であってもラジギールという車で3時間ほど離れた聖地の間は観光バスが襲われることもあり、私も実際に仏教青年会の団体旅行で警察官を傭って移動したこともある。駐在中あまり人気のない準聖地的なところに行ったことをすでに帰国された大先輩に話したら、危険すぎるとこっぴどく怒られたこともあった。場所によってはほんとに危ない。

このダコイットとは別に1998年にインド毛沢東主義共産党集団のマオイストがビハール州で大暴れしておりブッダガヤのお寺が狙われた。小規模寺院の多くは襲われ足を撃たれたチベット僧もいた。日本寺の隣の国立ブータン寺が襲われた時は明日は我が身かと血の気が引いた。本当に血の気が引く時は足に血が集まったようになり、まるで鉛のように足が重くなった。最終的には警察部隊と彼らが真っ昼間に銃撃戦までしていた。結局日本寺は襲われることはなく静かになって行った。話によると日本寺は無料で幼稚園や病院をしているのでその貢献が認められていたのではないかということだった。

以前から日本寺従業員が自宅を襲われて財産を持って行かれたこともあった。当時のブッダガヤの政府の宿泊施設の館長はなんと誘拐されて1カ月解放されるまで一緒に生活していたという。強盗や誘拐は忘れた頃に聞くインドの暗い部分である。

現在はかなり治安はよくなったというが、私は今でもインドの夜間移動とバスの団体移動は怖い。

高知 307

インド団体旅行で警備をお願いした警察官。ブッダガヤ、ラジギールなどの要所を離れた場所に行く場合、ビハール州では決して大げさではない。